アメリカの闇が深すぎる "Caste The Lies That Divide Us" by Isabel Wilkerson

『Caste』のカバーアート
著者: Isabel Wilkerson
ナレーター: Robin Miles
再生時間: 14 時間 26 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2020/08/04
言語: 英語
Kindle版はこちら

普段なら選ばないジャンルだけれど、いろんなところで絶賛されていたので読んでみました。

結果→長かった。とにかく長かった。そして聴いていて辛かった。

カースト制度」と聞くと、インド特有のものと思いがちだが、アメリカ合衆国にもカースト制度は存在し、黒人はカースト制度の下位グループにある。カースト制度という視点でアメリカ社会を見ると、なぜトランプ大統領が支持されたかさえも見えてくるよというお話。

14時間越えのほとんどが、いかに黒人が差別に苦しんできたか延々と語られる。そしてそれは「差別に苦しむ」とかそういう生易しいものではない。リンチという言葉は、ネットリンチという言葉としてはまあまあ耳にするけれど、肉体的なリンチという意味ではあまり聞かなくなったと思うが、その肉体的(同時に精神的)リンチが次々に描写される。ホラー映画、マニアックな痛いものを好む人用の映画?で行われるような、想像を絶するリンチがこれでもかというほど出てくる。しかもそれは映画用に脚色されたものではなく、実際に実際の人間に対して起こった行為なわけです。人間って恐ろしい動物。

アメリカでは、黒人大統領が誕生し、黒人への差別は過去のものになろうとしているのかと考えがちだが、そんなに簡単に人は変わらない。この本の著者は黒人で、TEDでのスピーチを見たけれど、見た目も振る舞いも知的で洗練されて、とても立派に見える。その彼女でさえ、現在でも毎日が差別行為を受けているという。いかに目に見えないカースト制度が人々に染みついているかが延々と語られる。

 著者は被害を受けている側として綴っているけれど、人間は誰でも多かれ少なかれ、カースト制度を好きなのだと思う。白人でも黒人でも、人種差別をして人を見下す人は「実際に」たくさんいる。女王の教室(古くて申し訳ない)で真矢が「人間が生きている限り、イジメは永遠に存在するの。 なぜなら、人間は、弱いものを苛めるのに、喜びを見出す動物だからです。 」と言ってたのは真実。

最後の方に出てくる著者と修繕に呼んだ人とのやり取りは、CMで流れていた相田みつを氏の詩の話だなと思いました。

セトモノとセトモノと
ぶつかりっこすると
すぐこわれちゃう
どっちかやわらかければ
だいじょうぶ
やわらかいこころをもちましょう
そういうわたしはいつもセトモノ

この一件は、差別とかカーストとかの話ではなく、セトモノの話。白人同士だったとしても同じだったはず。

おすすめ度:★★★☆☆

ポジティブな内容がほぼ出てこないのが聞いていて辛くなってくる。そういう目的で書かれた本ではないから当たり前だが。話題になった本なので、読んで損はないと思うけれど、要約バージョンがあればそれで充分だと思う。
…と思ったらありました。聞いてないけど。
『Summary of Caste by Isabel Wilkerson』のカバーアート