ジグソーパズルのピースが揃ってくるのが素敵 "Anxious People" by Fredrik Backman

『Anxious People』のカバーアート

著者: Fredrik Backman
ナレーター: Marin Ireland
再生時間: 9 時間 53 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2020/09/08
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スウェーデンでのお話。強盗に入った銀行がキャッシュレス銀行だったことから強盗は失敗。この強盗がたまたま逃げ込んだのは売り出し中アパートメントのオープンハウス。強盗の望む望まないに関わらず、このオープンハウスに来ていた人を人質にした立てこもり事件となってしまう。後に人質は解放され、アパートメントに警官が踏み込んだ時には、強盗は消えている。床に大量の血痕を残して。強盗はどこに消えたのか?

警官は強盗を探すために、人質になっていた人に対して次々にインタビューをするのだが、誰一人として要領を得ない。本人たちはいたって真剣に、それぞれ(警官にとっては)馬鹿げた話ばかりを延々とする。

また、強盗の話と並行して、アパートメントから見える橋で10年前に起こった飛び降り自殺が語られる。この人質事件と10年前の事件はどう絡んでくるのか。人質たちそれぞれの話もランダムに進み、繋がりがわからない。だから読んでいて困惑する。つまらないとさえ感じてしまう。

しかし、我慢して読み進もう。次第に、とりとめなく進んでいた(ように見える)それぞれのお話がどうやら繋がっているぞ…となったころから、ストーリーはじわじわと本質を表す。人質事件を解決しようとする親子警官、精神科医、消えた強盗、10年前の自殺…。ばらばらに見えていた話が、ジグソーパズルのピースがはまっていくように、次第に全体像が見えてくる。最後はジグソーパズルの最後のピースがスポッとはまったような爽快感と共に、なるほど!と膝を打つ。そしてしみじみと「いいお話だった…」と感心。

すべてのピースがそろったジグソーパズルを眺めた後、また最初から読み直したくなる。そして実際に読み直すと、「なるほどね…」とさらに面白く読めます。

ユーモア・風刺というジャンルになっているけれど、最後まで読むとかなり心暖まり系なお話であることがわかります。なんといってもザラが良い。ザラ最高。彼女とはきっと友達にはなれないと思うし、なりたくないけれど、少し離れたところで彼女を観察していたい。

そしてスウェーデン人にストックホルムとはどういう場所であるのか、ストックホーマーとは実際どういう意味合いを持っているのかをじっくり聞いてみたい。いわゆる「東京人」というのとはずいぶん違っているというのはわかりました。

おすすめ度:★★★★☆
途中まではつまらないかも。でも我慢して読み進めましょう。最後にかけて気持ちいいほどすっきりします。