"Miss Benson's Beetle" by Rachel Joyce

『Miss Benson's Beetle』のカバーアート

著者: Rachel Joyce
ナレーター: Juliet Stevenson
再生時間: 12 時間 4 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2020/11/03
言語: 英語
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多くの本の主人公の特徴として
① 貧しいけれど、よく見るとたぐいまれな美しさ
②虐待されて育ったが、実は卓越した才能を持つ
というのがあげられると思う。彼らは、当たり前だが、本の主人公になるべくしてなる人間で、自分とは違う世界の人であり、気分を盛り上げようと読んだつもりが、かえって自分の不甲斐なさを思い知らされてさらに落ち込むということも…。

しかしこのミスベンソンは、ものすごく平凡。外見の美しさも特技もほぼ何も持っていない。46歳独身。太っていて、髪はもじゃもじゃで、ひとりぼっち。破れた靴を履いて教師として働いている。性格も良いとは言えない。ある日、生徒が彼女の姿を面白おかしくマンガにして、授業中に回して笑いものにしていたことをきっかけに、彼女の中でなにかがぷつんと切れる。そして彼女は子供のころに夢見たGolden Beetleを捕まえるために、ニューカレドニアへ旅立つことを決める。

アシスタントとして雇った人は、ミスベンソンとは真逆な性格で、彼女がアシスタントを募集しなかったら絶対に出会うことはなかったタイプ。二人の相性は最悪で、Golden Beetle探しは絶望的に思える。

この大失敗に思えたアシスタントが、ミスベンソン一人では絶対に乗り越えられない難局を次々に打破していく。最悪のコンビに思えた二人が、最強のコンビに変わっていく。ミスベンソンとアシスタントがお互いの欠けているところを補い合う、というのではない。二人の足し算ではなく、何倍にもなる掛け算で力を発揮し、もはや元の自分ではなく新しい人間に進化を遂げるよう。

とにかくアシスタントの行動がぶっ飛んでいる。それを受け止めるミスベンソンのリアクションが楽しい。著者の比喩の言葉のチョイスがセンスがあって、ぷっと吹き出してしまう。

また情景の表現も美しく、二人と共にニューカレドニアの自然の中を旅しているような気持ちになりました。最後はたぶん多くの人が感動で泣くと思います。

超!おすすめです。ナレーターも素晴らしく、映像が浮かんできました。ぜひ映画化してほしい。

おすすめ度:★★★★★